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バイクに適したボルトの素材を考えてみた[チタン][ステンレス][鉄]

2021年4月23日

バイクに適したボルトの素材を考えてみた

バイクを整備・カスタムしているとボルトを変える事がよくあり、僕の自宅にはたくさんのボルトがストックされています。

単純に処分していないだけという理由もありますが、適当なボルトが必要になることが多いので今までボルトが余った際は処分せずに保管をしてきました。

例えばマフラーを変えたら、固定するためのボルトはマフラーに付属のものに変えたり、純正品では取り付けが出来なくなることも珍しくありません。カスタム用のボルトも売っていますし値段もピンきりです。

見た目重視だったり、性能を上げるためにボルトを変えたり色々としてきましたが、その中で色々と気がついた事があるので、まとめておきます。

バイクに適したボルトを素材から考えてみる

まずはボルトの素材についてです。

オートバイのボルトとして使われる事がある素材は、「鉄」、「アルミ」、「ステン」、「チタン」の4種類がメインです。

細かく言うとそれらの中にも色々あるのですが、わかりにくくなるので今回は割愛します。

鉄のボルト

鉄のボルトはサビが発生しやすい。
鉄のボルトはサビが発生しやすい。

純正部品として一番多く使われているのは鉄素材ですね。

特徴としては単価を安くできるのと、素材としての強度を出しやすいです。

難点は「サビ」が発生しやすいのと、「重い素材」であることです。

対策として「表面をメッキ加工」したり、「防錆処理」をするのですが、長い年月屋外にいるとどうしてもサビは出てきてしまいます。

特に中古車や古い車両では顕著です。そこを改善したくてバイクのボルト交換を考える人が多いのではないでしょうか。また強度は確保できるものの、アルミやチタンに比べるとどうしても重量が増えてしまうということもマイナスポイントです。

アルミのボルト

アルミのボルトはカラフルなものもある
アルミのボルトはカラフルなものもある

アルミは純正で使われていることはあまりないです。

長所として鉄やステンレスに比べ素材が軽いです。

バイクに使われるボルトは総数ではかなりの数になるので、もし全てのボルトをアルミで組めたらかなりの軽量化になります。

カウルの取り付けなどではそこまで締め付けトルクを必要としないので軽量化のために使うこともあります。

エンジンカバーのボルトなどのカスタム用として、カラフルなものが売られていたりもするのでドレスアップにも使いやすいですね。

短所は柔らかい素材なので、強い力をかけた際に折れてしまう危険があります。

ある程度の締め付けトルクを必要とする場所には使う事ができません。足回りやエンジン内部に使うことは基本ないです。

ブレーキホースのジョイントなどに使われている事もありますが、僕は基本アルミのボルトは使わないようにしています。

ステンレスのボルト

ステンレスのボルトはサビが発生しにくい
ステンレスのボルトはサビが発生しにくい

ステンレスは錆が発生しにくいのと値段も手頃で2輪用品店などでよく売られています。いろいろなサイズが売っているので自分の車両に合うボルトが見つかりやすいです。

強度があり、サビが発生しにくいのでバイク用途には使いやすいボルトです。錆びないというのは古い車両に乗るオーナーにとってはとても魅力ですよね。

短所は「ステンレスボルト」は熱が入った際かじりやすいです。(固着する)ウインカーの取り付けや、ハンドル周りであれば特に気にする必要はないですが、熱が入る場所での使用には向いていません。エンジン内部やマフラーなど高温になる場所には、純正で鉄のボルトが使われているはずです。

チタンのボルト

チタンのボルトはとても高価
チタンのボルトはとても高価

あまり一般的ではありませんがチタンのボルトも存在します。ホームセンターなんかではまず売っていません。ボルトとしてはかなり高価です。

バイクでチタンというと、チタンマフラーが一番有名です。

チタンは重量が軽く、強度もあるので軽量なマフラーを作る事が出来ます。この特性はボルトでも同じで軽く、強度を出すことができます。

レース車両なんかではたくさん使われている素材です。(最近は純正でチタンマフラーの車両もあります。)

難点はご存知の通り値段が高額です。
チタンという素材を鉱石から金属の形にするまでに手間がかかることや、他の素材に比べ加工するのにも手間がかかることが影響しています。金額を気にしなければチタンのボルトや部品を積極的に使っていきたいところですが、現実的には厳しいですよね・・・

「バイクに適したボルト」を場所から考えてみる

マフラー付近のボルト

この場所は高温になります。

燃焼直後の排気ガスは700〜800℃と言われていますが、それは排気ガスの中心(一番温度が高い所)でエンジンの壁やマフラーに触れる部分はもう少し低いようです。

排気量やエンジンの使い方にもよりますが、大型車特に空冷や油冷の車両はフランジボルト周辺で500℃近くになるようです。

エンジンのヘッドカバーは通常の塗装ではすぐ剥がれてしまいます。ヘッドカバーを塗るなら耐熱塗料が必要ですよね。

一般的なステンレスボルトは「400℃が耐熱温度」とされているので、場合によっては耐熱温度を超えてしまいます。

マフラーのフランジボルトはサビで取り外すのに苦労する場所ですが、通常は鉄で出来ていてステンレスよりも耐熱に優れたボルトを使っているわけです。

この部分にステンレス素材のボルト(ナット)を使うと耐熱温度を超えてしまう可能性があるので、見た目をなんとかしたくても鉄(純正)を使うほうがいいということになります。

素材の違うボルトの組み合わせ(鉄のボルトにステンレスのナット)も良くなくて、金属の膨張率が鉄とステンレスでは異なるのでネジ山が歪んでしまいます。いわゆるかじりです。

耐熱グリスを塗ればカジリを防止することはできます。(昔はよくわからなかったので、見た目をなんとかするためにステンレスのナットを鉄のフランジボルトにつけてました)

それでもステンレスの耐熱温度を超えているからでしょうか?熱収縮のせいでしょうか?すぐ緩んでしまうんですよね。

マフラーの固定を第一に考えるのであれば、純正のボルト、ナット(鉄)が一番と思って良さそうです。

ちなみに「スーパートラップマフラーの皿を固定しているボルト」はステンレスです。

ここは排気ガスの出口なので燃焼室から出てきた直後のような高温ではありません。
ですが、このボルトよくネジが焼き付くことで有名です。

排気ガスのススやゴミを噛み込む事も原因としてあるかもしれませんが・・・販売元でもこのボルトを締める時は、耐熱グリスを使うことを推奨しています。本来は鉄のボルトの方がいいのかもしれないですが、このボルトが特殊(インチネジ)なので普通のホームセンターなどでは入手出来ません。

僕はそのまま使っていますが、必ず耐熱グリスを塗ります。耐熱グリスは一つあると便利なので持っておくといいです。

エンジンクランクケースカバーのボルト

クランクケースカバーのボルト
クランクケースカバーのボルト

ここはエンジンのヘッドに比べ、そこまで温度は上がりません。素材が向いているか向いていないかは別にして、ステンレスボルトを使っても問題はないでしょう。

オークションなんかで「車種ごとにセット」になったものが売ってます。

しかし、ステンレスである以上耐熱温度は鉄より低いですし、熱でかじりやすい事も事実なので耐熱グリスを薄く塗るなど対策はすべきです。(特に大型など熱量の大きい車両)

ステンレスのボルトにした場合はボルトの緩みにも気をつける必要があるので、定期的にトルクをチェックしたほうがいいです。特にエンジンが高温になる車両(大型車)は純正の鉄製のほうがいいかもしれません。

ボルトを交換する場合に注意したいのは「ボルトの長さ、径」だけではなく、座面の大きさも考える必要があるということです。

用品店で同じ長さのボルトを買ってきて、取り付けても座面の径が違う事って結構多いです。

直径1cmの座面で30ニュートンの力で締めるトルクを受け止めているボルトがあるとして、座面の直径が5mmのボルトで代用したら、本来1cmの座面で受けていた力を5mmの座面で受け止めなければいけません。(極端な話ですが)

無理に取り付けるとクランクケースカバーを痛めてしまうので注意しましょう。

ウインカーやホーン、ライトなどを取り付けているボルト

ここは高温になることもないですし、見た目重視で素材を選んでも問題ないです。

素材の電位差によって錆が発生しやすくなるという可能性もありますが、メッキ処理や塗装が施されている事が多いですし、さほど強度が必要な場所でも有りません。

ブレーキ、アスクルシャフトなど強度が求められる場所のボルト

油圧ブレーキの代表「ブレンボ」(写真はヤマハブレンボ)
ブレーキキャリパーのボルト

ブレーキやサスペンション関連のボルトを交換する理由は、「素材の特性を変えてフィーリングを変化させる」、「軽量化」などいくつか理由があります。

この「フィーリング」は人間の感性なので少しややこしいです。

まず、「強度」「剛性」「剛性感」この3つの言葉を理解しておく必要があります。似たような言葉ですが、それぞれ意味合いが違います



強度・・・素材の耐えられる力の大きさ(超えると壊れてしまう)
剛性・・・力を加えたときの変化量の大きさ(壊れるまでの耐久力、しなり)
剛性感・・・人間が感じる感覚



人が操縦して「剛性感が高い!」と感じるのと「ボルト自体の剛性が高い」のは別物ということです。「剛性が高い材質」を素材に使っても操縦している人が「剛性感が高いと感じるとは限りません」。

もう一つややこしくなる要素があります。少し難しい話になってきますが、、、

「剛性(ヤング率)が低い金属は、能力が低い」というわけではありません。

実際アルミより、鉄の方が剛性(ヤング率)は高いですが、剛性が求められるレース車両(motogpなど)はほぼアルミフレームです。ドカティなどは鉄フレームのマシンもあるのかな?強度を出すだけなら、鉄(クロモリとか)のほうが簡単だけど、強度の低いアルミをわざわざ使用して(設計で強度を確保)でもアルミを使うメリットがあるということです。重量もその要因の一つです。

素材の理論上の数値だけではなく、設計や構造で対策をしながら、メリット、デメリットを考えた時に何が一番いいかという話ですね。

高性能なレース車両などは設計の時点でチタンのボルトを使うことを前提に設計しているので、軽量化というメリットを引き出せますが、量産車の場合ネジのメス側は純正の鉄ボルトをベースに設計しているわけですから、ボルトをチタンにしてもせっかくのチタンのメリットを引き出せません。

軽量化にはなりますが・・・

ここでは「ブレーキやサスペンション付近」で使われる「鉄」と「チタン」の比較します。

・チタンと鉄を比べると、チタンのほうが軽量。
・チタンと鉄を比べると、「剛性」は鉄の方が高い。
・チタンと鉄を比べると、「強度」はチタンのほうが高い。

鉄のボルトをチタンボルトにした場合、高強度にはなりますが、剛性は上がりません。

むしろ鉄に比べヤング率(剛性)が下がっているのでデチューンになっているということになります。

※アスクルシャフトの軽量化(バネ下の軽量化は効果が高い)により路面からの情報が伝わりやすい〜とかなら話は別です。。。

理論上、鉄のボルトをチタンボルトに交換して「剛性」が上がるということはありません。

では多くのインプレは間違ったことを言っているのかというとそうでもないと思います。

僕の車両にもフロントフォーク関係の一部にチタンボルトが装着されており、たしかに純正の鉄ボルトと比較すると変化を感じられるのです。

「プラシーボ効果」のような気もしますが、調べてみました。そこで出てきたのがチタンの振動減衰特性です。

チタンの振動減衰特性

剛性(ヤング率)と剛性感は別です。

つまりライダーが「剛性感ある足回りだ」と感じるのには影響するのは素材の剛性だけではないという事です。

チタンボルトは振動減衰特性が優れていて、大げさに言うとボルト自体がサスペンションの性能を持つようなイメージです。

「路面の情報をライダーに正確に伝えてくれる」というか、ブレーキを積極的に掛けても怖くないし、ハンドリングもいい。

体感的には性能が良くなった感覚は確かにあるんです。

「剛性が上がった」というのは「数値上ありえない」のですが、そう言いたくなるような変化は確かにあるんですよね。

これにはボルトをチタンにしたことで、軽量化による作用も含まれているかもしれません。

ボルトの管理状態が悪く、交換に伴い「締付け値が既定値に戻った」という可能性も否めないです。

特に古い車種では結構効果を体感できるのではないかと思います。

まとめると剛性感は人間の感じ方なので、振動や衝撃が伝達するスピードや減衰特性によって変わってくるということです。

振動減衰特性を目的に、チタンボルトを選択するのは有りですが、剛性を上げるためにチタンボルトを選択するのは間違っているということになります。

(ボルトの強度は上がりますが、純正が鉄ボルトで設計している以上、ネジのサイズを変えないと「オーバースペックの強度」ということになる。)

バイクに適したボルト〜まとめ〜

僕は専門家では有りませんし、この記事にも間違っている部分もあるかもしれませんが、バイクのボルトを変えるということは、場所や素材によって様々なメリット、デメリットがあるということが伝わっていれば幸いです。


実際、ここでは推奨していませんが、昔はマフラーのフランジにステンレスのボルトを使ってました(笑)見た目をなんとかしたかったんです。

もちろん耐熱グリスを使用してはいましたが、特にかじったりはしませんでした。

向き、不向きはあるもののそのまま使えていたのも事実です。

ただせっかくお金をかけてカスタムするのですから、見た目はもちろん性能的にも下がっていると残念な気持ちになってしまうので、せっかくカスタムするなら素材の特性を知ってベストな選択をしましょうということです。

この記事が皆さんのバイクカスタムの参考になれば幸いです。

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