先日紹介したDEENのスイベルラチェット。
大きさ違いで3本使っているのですが、その中の1本が調子が悪くなりファクトリーギアの店頭に持っていって調整してもらいました。
グリスが経年劣化で固くなり悪さをしていたようです。「洗浄、グリスアップ」することで元通りに小気味よく空転するようになりました。
その際、メンテンス方法をレクチャー(といっても横で見させてもらっただけです)して頂いたので、家にある他のスイベルラチェットもメンテナンスすることにしました。
せっかくメンテナンスするので「内部のギアに使うグリスを変えることで回転(空転トルク)にフィーリングの変化が出るか実験」することにします。
実際に整備をする時に大事なのは「耐久性」や、「ギアの枚数」ですが、個人的には「空転トルクができる限り軽い」ということも重要視しています。
空転トルクが重い(固い)と緩んできたボルト(手では回らないくらいの固さはある)が共回りしてしまって、ラチェットとして使いにくいんですよね。
Ko-kenのラチェットは空転トルクの軽さを重視して作られているようで、空転トルクがとても軽いです。出来ればそのフィーリングに近づけたい・・・
内部のギア部に使うグリスを変えることでフィーリングに変化が出るのは知っている人は知っている話です。という事で今回は以下のグリスを試してみました。
1・シリコングリス・・・ラチェット内部のギアに使う人が多いグリスで大本命です。
2・チェーンルブ・・・粘度の低いグリスであれば空転トルクが軽くなるのでは?
3・デイトナ、万能グリス・・・家にあった万能タイプのグリスです。
それでは、分解していきましょう。
目次
DEENスイベルラチェットの分解方法
プッシュリリースのボタンを外す
まずプッシュリリースのボタン部にある「トルクス9番」のネジを外します。(ネジロック剤が噛んでいて回転が渋いかもしれません。)
日本車を整備するとトルクスネジ、ボルトを使うことってあまりないです。(特に古い車両)
でもこのネジって構造的に舐めにくいですよね。
はじめは見たことない特殊ボルトでトルクスが出てくるたびに工具を揃えるのが面倒でしたが、最近はプラスネジよりトルクスの方が断然舐めにくいことに気が付き、もっと広まればいいと思っています。
プッシュリリースのボタン下にある8mmボルトを外す
トルクスのネジを外すと、内部に8mmのボルトが出現します。これを外すことでラチェットレンチ内部のギアまでアクセスすることができます。
このボルト、クリアランスが厳しく通常のソケットやレンチではアクセスする事ができません。
ネプロスの8mm、ko-kenのz-eal8mm(いずれも1/4)のソケットで外せるようです。
このボルトを外すと内部が見れるようになります。
洗浄・グリスアップ
ギア部分を止めている物が無くなるので、内部パーツを無くさないように、トレーの上での作業したり手で押さえておいてください。
これで内部の部品を全て外すことができます。
内部のギアに付着しているゴミや古いグリスをパーツクリーナーなどで洗浄しましょう。
内部にあるハート型のスプリングはスイベルラチェットの肝ともいえる部品です。
このスプリングが変形したりしてしまうと回転方向の切り替えが上手くできなくなったり、うまく空転してくれなくなったり、ギアが飛んだようにギアがうまく噛み合わなくなったりします。
このスプリングはあまり触らない方がいいです。
ほんの少し変形させてしまい、修正にだいぶ時間がかかりました。。。
最悪の場合は内部の部品を買い直す必要があるようです。
洗浄後グリスを塗ったら、後は組み立てるだけです。
DEENスイベルラチェットの組み立て方法
ここからは元に戻していきます。
そこまで難しくはありませんが、回転切り替えの蓋の裏にあるポッチをハート型のスプリングの内側に入れないと上手くラチェット機構が働きません。
無理にはめようとすると、スプリングが浮き上がってしまいイマイチ動きが悪くなってしまいます。言葉で表現するのが難しいですが・・・スプリングを変形させないように慎重にやってみてください。
上手くはめ込めたら、後は8mmのボルトを締めていきます。
この時のボルトの締め具合が空転トルクに関係します。
締め込んでしまうと全ての動きが固くなってしまい、正常に使えません。
抵抗が出るまで締め込んだところから1/4~1/8回転くらい戻した所がちょうど良かったです。(緩めると、空転トルクが軽くなるのですが、ソケットをはめる部分が浮いてしまったりすき間ができてしまいます。遊びも出てしまい、これはこれで都合が悪いです。)ちょうどいい場所を探してください。
締めたところから少し戻すからでしょうか?標準ではネジロック剤が塗られているはずです。
なので一応僕もネジロック剤を塗っておきました。
次回開けるときのために低強度にします。
グリスによる空転トルクの変化〜まとめ〜
1・シリコングリス(呉のスプレータイプ)回転トルクに変化はあまり感じられなかった。
2・チェーンルブ(ワコーズ)流石に粘度が低すぎたようで、ギアの共回り?が発生した。また回転方向の切り替えレバーの動きが悪くなってしまったので使い物にならなかった。
3・万能グリス(デイトナ)特に特徴のないグリスですが、これが一番相性がいいようです。まず動作に不具合は無く、回転の切り替え、空転も問題なく動作しました。全体にグリスが馴染んでくると空転トルクが軽くなった。
(流石にko-kenと同レベルまでは行きませんが、長さ違いの同じヘッドを持つDEENのスイベルラチェットと比べると確実に軽くなっています。)
今日の実験?チューニングでは、1/4ヘッドに3/8差し込みをつけたモデルで試しました。
この後、3/8のモデル、280mmの大きいスイベルラチェットもデイトナのグリスを使ってみましたが、1/4ヘッドほどの変化は感じられませんでした。(少しは軽くなっているような気がしますが、気がするレベルです。)
この長さとヘッドの大きさから考えるに、大きなトルクを掛けてもギアが破損しないように、接触面の大きさなどが違うのでしょうか?バイクだと足回りなどで使うサイズなので、そこまで空転トルクが軽くなくても実用上はそんなに問題ありませんが・・・
とは言え、当初の目的1/4ヘッドのDEENスイベルラチェットの分解・洗浄と空転トルクの改善は達成されているので今回の実験は成功ということにしておきます(笑)
同じようなカスタムを施そうと考えた人の参考になれば幸いです。